(11)身体醜形障害

村山隆志
秋葉原ガーデンクリニック

1.概要

他の人から見ると、それほど奇妙には思われないのに、本人は自分の体形がひどく醜く劣っていると思い込み、その結果周囲の人たちに不快感を与えたり、軽蔑されていると思い込んでしまう病的な悩みをいいます。

2.好発年齢など

思春期から青年期にかけて多いとされていますが、発症に遺伝とか家族的な要因は指摘されていません。性差は、はっきりしませんが、女性に多い印象があります。

3.成因

特定はされていませんが、幼いときの育った環境で、過剰な干渉があったことや、両親や家族などと一緒に楽しんだり悲しんだりした経験が少ないこと、良好な親子関係が作れなかったことなどが関係するのではないかといわれています。また、時には、身体的特徴を取り上げて「いじめ」を受けたことがきっかけになることもあります。

4.基本症状

客観的評価と大きくかけ離れて、自分自身が醜いと悩み、そのために普通の社会生活が出来ないことです。

5.合併症・同時にある症状

1)他の病気の一つの症状としても起こることがありますし、うつ病の2~3%に同じような訴えがあるといわれています。

2)その訴えのために頻回の美容外科手術を受けることもあります。

3)不登校や引きこもりの原因にもなります。

4)広い意味では、摂食障害の一般的には、ずいぶんやせていると思えるのに、本人はまだやせなければならないと思ってしまうような自分の体形についての歪んだ考え(ボディイメージの障害)も同じように考えられるかもしれません

6.診断

ありもしない外見上の欠陥について、非常に悩み苦痛を感じて、社会的・職業的、あるいは様々な社会生活に障害を引き起こしてしまう。そして、そのとらわれは、他の精神疾患で説明が出来ない時に診断します。

7.経過

治療は、簡単にはいかないことが多いようです。

8.対応

この病気の人の中には、自分の容貌に関して深刻な問題を抱えていても、訴えることをせずに一人悩んでいて、引きこもりを続ける場合もあります。また、自分の醜さのみを主訴として外来を受診してくることは少なく、むしろ、頻回に美容外科的手術を受けたり、多くの皮膚科医や形成外科医を繰り返して受診することなどから周囲に心配されて来院することが多いのです。
中には、ほくろやシミといったある程度、訴えを裏付ける事もありますが、たとえそうであっても一般的には見逃される程度であり、多くの場合、他者から容姿はむしろ優れていると見なされることが多いようです。
しかし、その人の訴えを否定するだけでは、治療の意味をなさないのはもちろんですし、彼らの訴えは、自分の理想とする姿が高すぎ、自分の容姿がそれに到達していないと悩む、あるいは、自分の容姿の中に容認出来ない部分があり、それを自他ともに認められる様に改善せねばならないとむなしい努力を繰り返すといったことにありますが、その背景には、自己評価の低さがあります。したがって、彼らの訴えに耳を貸しながら、自信を持ち、自分自身の評価を高めるように配慮していくことが重要となります。薬物療法は、必要に応じて抗不安剤などを用いたり、うつ的な状態の場合は抗うつ剤を対症療法的に用いることもありますが、彼らと関わる人は、まず彼らを裏切らない良き隣人として存在することが求められると思います。しかし、頻回の美容外科手術を受けたり、訴えが執拗で妄想に近い場合は、統合失調症を含めて鑑別診断が必要ですので、精神医学の専門的な対応が必要です。

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