(13)身体化障害

二宮恒夫
日本小児心身医学会

身体化障害は、器質的な病変の存在が証明されないにもかかわらず、多彩な身体症状を長期にわたり訴える疾患です。

発症には、遺伝と、環境からの心理的不安や葛藤の双方が関与していると言われています。家族に身体化障害の患者がいる場合、子どもにも発症することが多く、子ども時代の愛情喪失体験・虐待などとの関連が指摘されています。女性に多く、通常は10歳代に始まり、25歳ごろまでに発症します。子どもには、比較的少ない疾患です。

診断は、以下のような症状を参考に行われます。(高橋三郎他:DSM-Ⅳ、精神疾患の分類と診断の手引.医学書院,東京,1997,p177-178)

  1. 30歳未満で始まる多数の身体的愁訴で、数年間にわたって持続し、治療を求め、社会的職業的に障害を生じている。
  2. 以下の基準の各々を満たし、個々の症状は経過中のいずれかの時点で生じる。
    1)4つの疼痛症状(少なくとも4つの異なった部位または機能に関連した痛み。例えば、頭部、腹部、背部、関節など。)
    2)疼痛以外に少なくとも2つの胃腸症状(嘔気、嘔吐、下痢など。)
    3)疼痛以外に1つの性的または生殖器症状
    4)1つの偽神経学的症状(疼痛に限らず神経学的疾患を思わせる症状または欠損。平衡障害、麻痺、脱力、複視など)
  3. 1)または2)
    1)適切な検索を行っても、既知の身体疾患(全身的な多彩な臨床症状を示す多発性硬化症、全身性エリテマトーデスなど)または物質(薬物乱用、投薬など)の直接的作用として十分説明できない。
    2)身体的愁訴、または社会的、職業的障害が、既往歴、身体所見、臨床検査所見から予測されるものをはるかに越えている。
  4. 症状は、意図的に作り出されたりねつ造されたりしたものではない。

経過は、慢性に経過し、ストレスによって増悪ないし再燃します。どのようなときに症状が悪化するかなど、家庭・学校環境などにおける対人関係のストレスに少しずつ気づき、ストレス対処能力の向上、環境調整に努めることが必要です。

1年以内に新たな症状が出現することが多く、経過中実際に身体疾患に罹患することも珍しくありません。身体疾患を見逃さないよう、経過中も検査を適切に行うことが必要です。

症状が長期間にわたるため、診療に不満を抱き、多くの医師を転々とし、鎮痛剤や鎮静剤などの常用、それに伴う薬物中毒や副作用の危険もあります。うつ病、不安障害との合併もあり、信頼のおける医師のもとで、定期的な受診が必要です。

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