理事長挨拶

日本小児心身医学会30周年に寄せて(30周年記念号巻頭言より)

 日本小児心身医学会は30周年を迎えました。まことにおめでたいことであり、大きな喜びと誉れを感じます。またそれ以上にこれまでの先輩諸先生方の多大なご尽力、ご指導に心からの感謝を捧げさせていただきます。

 本学会は昭和58年に創立致しました。当時から小児心身症が一般診療において増えつつある状況からすべての一般小児科医は小児心身医学を習得し、日常臨床に携わる知識・技能を獲得することを目標に、精力的な事業を展開して参りました。その詳細はすでに当学会機関誌だけでなく、日本小児科学会雑誌にも報告してきました。代表的事業として、様々な研修会開催、診療ガイドラインの出版、広域地方会の設立完了、学会認定医試験制度の開始が挙げられます。現在は法人化に向けての作業に着手し、鋭意準備中であります。

 平成20年、小児心身医学のより一層の発展が子どもの幸福、日本の幸福に寄与せんがために、「先見性のある学会」を旗印に、会員数1000人突破を学会目標の一つに掲げました。平成17年には821名、平成23年5月には1018名となり目標を達成致しました。これも会員諸氏、皆さまのお陰であると心から感謝申し上げます。

 ところで、日本は先の大戦では完膚なきまでに敗北しました。しかし、半世紀以上に及ぶ国民の弛まぬ努力によって荒廃から完全に立ち直りました。戦争を連想させる国家神道が解体され、物質的豊かさと平和を大目標としました。そして数十年、科学文明が高度に発達した一方で、精神性が追随していかなくなったといわれています。その悪しき兆候は、まず子どもを育みはずの家庭に、そして教育現場に表れてきました。人を愛する心、地域を愛する心、国を愛する心が学校教育から失われ、悪しき毒水が子どもたちの心を汚しています。

 しかし、誠実な人々、子どもたちが憂き目を見る世の中であってはいけません。気概のない、公約破棄でも責任を取らない政治家や官僚、浅薄で営利主義のマスメディアには、子どもたちの未来を任せてはおけません。美しい心、豊かな心、正しい心を取り戻すために、私たち会員のなすべき使命、天命は重大です。心や身体に悩み、苦しみを持つ子どもたちとその家族に日常診療を通して支援と救済を続ける志をこれまで以上に、強く維持すること、そしてそのための創意工夫と努力が大切です。すべての子どもと家族が素晴らしい新未来社会の担い手になるように、本学会がオピニオンリーダーとして「先導性」を発揮することが重要です。子どもの心と身体の専門家集団である本学会が、荒海を漂流する巨船の「船頭」として果たす役割は非常に大きいものがあります。私たち一人一人は一致団結し、沈没寸前の巨船を再浮上させる気概を持ち続けて参りましょう。皆さまのご支援、ご協力をどうぞよろしくお願い致します。

平成24年7月1日
日本小児心身医学会 理事長
田中英高

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