理事長挨拶

一般社団法人としての日本小児心身医学会の役割(22巻3号巻頭言より)


  日本小児心身医学会は本年7月をもって一般社団法人を取得いたしました。創立 30周年の本学会にとりまして誠に慶事であり素晴らしい節目であります。  ご賛同とご支援をくださった会員の皆様には心から感謝し、ともに喜びたいと思います。 この法人化を数年前から企画し周到な準備を担当された会則委員会(委員長 竹中義人理事)には心からお礼申し上げます。この法人化取得の意義をあらためて確認し、法人としての学会未来ビジョンを会員の皆様とともに 共有したく、この場を借りて一言ご挨拶いたします。

  一般論としては、法人格を取得する目的は、ある事業主が個人商店から脱皮して、会社のように事業を大きく拡張し軌道にのせることにあります。個人事業とは異なり、法人名義で銀行口座を開設し、法人として銀行から融資を受けることが可能です。 法人では法的な規定があり、法律遵守とそれに耐えうる組織運営が要求されます。すなわち、いわゆるパパママ商店ではなく、社会的に認知された「組織経営」に移行する、という意味です。このように考えますと、日本小児心身医学会は設立間もないころから 投票による役員選挙を含めて会則が整備され、会計決算、監査も厳しく、法人並みだったといえるでしょう。

  そのような学会がなぜ法人化取得の必要があるのでしょうか。もちろん時代の流れがあり、社会的信用度や認知度を上げるには必須だといわれています。しかしそれだけではありません。法人取得の最大の意義は、われわれ会員が本学会の目的達成を本気でやろう、 不退転の決意である、とわれわれ自身があらためて確認すること、そして法人化による「組織パワー」をさらに強化することだと考えています。

 では「本学会の目的」とは何でしょうか。創設時から重要視された理念は「一般小児科の中で心身医学は実践されるべきもの」であり、理念達成の目標は、「すべての小児科医は小児心身医学を修得し、日常診療に携わる知識・技能を獲得することを目標」 とすることであります。子どものすこやかな心身の成長に貢献せんとする小児医学分野において、心と体の両面を学問する小児心身医学が最も重要です。過去30年間、会員、および非会員であっても心身医学に理解を示していただいた先輩諸氏のおかげをもちまして、 この目標はかなり達成されました。具体的には小児科向けや上級医向け研修会を30年間続け、保険委員会が診療報酬を改善し続け(担当 藤本保理事)、他施設共同研究による診療ガイドラインを作成、認定医試験制度を設立し(担当 岡田あゆみ理事)、 東日本大震災を契機に災害対策を推進し(担当 藤田之彦理事)、これらの成果を報告する機関誌発行を倍増しました(担当 石﨑優子理事)。その成果として創設以来会員数が増え、昨年1,000名を超え、なお新入会員が増えています。今年の第116回日本小児科学会総会における 本学会ガイドラインの教育講演(村上佳津美理事)は、最終日の午後にもかかわらず300名を超す参加者がありました。小児科医への啓発活動はかなり成果が上がってきたと思われます。

  しかしながら小児心身医学の普及はまだ不十分です。なぜなら初期研修医たちの多くが小児心身医学になじみがありません。その理由は、すでに第113回日本小児科学会シンポジウムで小柳憲司理事が発表したように、医学部卒前教育で小児心身医学に関する講義を取り上げている大学がまだ非常に少ないからです。 今後とも小児心身医学の重要性を訴え続ける必要があります。しかし、声を上げるだけでは成果は上がりません。そこで関係部署、関係各位に直接に訴えてお願いしてまいりました。その成果もあり、『医学教育モデル・コア・カリキュラム―教育内容ガイドライン―平成22年版改訂版』(平成23年3月)の 小児期全般の到達目標に、「心身相関」や「小児心身症」が加えられました。これは大きな前進であると考えています。今後も、医学界だけでなく、教育界にも各行政など各方面において私たちの提言を理解していただく努力をする必要があります。

  小児心身医学が小児科診療やプライマリケアにおけるきわめて当然な基本知識・技能として根づき、そして小児医療・福祉全体の中で心身医学が核になり、教育界をも変革し、さらには日本で育つすべての子どもたちが素晴らしい大人へ成長し、「自分は幸福な人間です」と語れる未来がくるように、 私たちが不退転の決意で道を切り開いていきたいものです。一般社団法人へ移行のこの節目に、この気持ちを「組織」として共有していただければ望外の喜びでございます。

  最後に、本年9月13~15日には法人化初回にあたる第31回日本小児心身医学会学術集会(テーマ:心とからだを育むよろこび)が、汐田まどか会長の下、米子で開催されました。厚生労働省 村木厚子事務次官の特別講演をはじめ、盛り沢山の企画に380名を超える参加者があり、学会の興隆ぶりを実感できました。 同時に一般社団法人化の祝賀会を開催、日本小児科学会会長 五十嵐隆先生、日本小児神経学会会長 大野耕作先生からご祝電を賜りました。会員を代表し、心からのお礼を申し上げます。来年、第32回日本小児心身医学会が大阪(国際交流センター竹中義人会長,2014年9月12~14日)で開催されます。 大阪発の未来ビジョンを直感していただけたら大変に嬉しく思います。1人でも多くの方にご参加いただきたく、心よりお待ち申し上げます。

平成25年11月1日
一般社団法人 日本小児心身医学会 
理事長 田中英高

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