平成22年度(第18回)中国四国地方会の概要

日時 平成22年5月30日 ※終了しております
会場 サンポート高松(高松駅徒歩2分)
会長 香川大学小児科伊藤教授
事務局担当 白川佳代子

第18回中国四国地方会の抄録

  1. 言語発達遅滞児へのかかわり―ことばの育つ道すじへの一考察-
    しらかわ小児科医院・回生病院発達外来
    ○白川佳代子
    言語発達遅滞児への2年間の治療的かかわりを通して、子どものことばの育つ道すじについて考察する。発達障害児と定型発達児では、言語獲得の質的な違いがあると考えられるが、その点についても検討したい。
    発語が少ない、目が合いにくい、奇声を発する、を主訴に初診の2歳児。共同注視とスクイッグル遊びを指導したところ、2歳2カ月で人形にミルクを飲ませるなどのごっこ遊びがみられ、2歳4カ月で目と目を合わせてバイバイするなどコミュニケーションがとれるようになった。保育所でも当初一人遊びが多かったが、少しづつ子どもの輪の中に入れるようになった。
    本症を通して、言語発達を促すかかわりとして、共同注視、ルーティン化したやりとり、描画課題の共有、養育者の足場作りが有用と考えられた。
  2. 共同注意に視点を置いた幼児期早期の広汎性発達障害の早期発見の意義と課題
    ―M-CHATの使用例を中心にー

    1)かねはら小児科
    2)山口大学教育学部付属教育実践総合センター
    ○金原洋治1) 石本美香代1) 冨賀見紀子1) 坂本佳代子1) 鮎川淳子1) 
    日野冨美1) 新村孝子1) 木谷秀勝1)2)
    自閉症の特性が強い子どもは、乳幼児期から、育てにくさや育てるのに手応えのなさなどのため、児童虐待や愛着の形成の障害などの2次障害を起こす頻度が高く、幼児期早期からの支援が求められている。しかし、幼児期早期には、自閉症の症状が顕在化していないため診断することが困難な場合が多い。幼児期早期から自閉症を早期発見するための取り組みは、我が国では、神尾や大神らが共同注意に視点を置いた評定尺度を開発しコホート研究を行っている。今回我々は、神尾らが開発した自閉症の幼児期早期のスクリーニングツールであるM-CHAT使用例を提示し、M-CHATの有用性と使用上の注意点、広汎性発達障害の早期発見および早期支援の意義と課題について述べる。
  3. 発達障害児者への個別SST(ソーシャルスキルトレーニング)による支援の実際とその効果の経過
    広島県立障害者療育支援センター
    ○長島智子(臨床心理士) 洲濵裕典 河野政樹
    当センターに来院する発達障害のある人々の特徴は、主に学校生活の中で教師やクラスメイトと適切に関係を保つことに失敗し、例えば不登校をはじめとした問題行動を起こす悪循環に陥っていることが多い。対策としては、相手の意図を推測し、同じ方向に注意がむけられるように調整したり、社会的情報を読み取り、必要な情報を提供し、同じ感情を抱いてもらえるように話をするなどのスキルもしくは、他者との関係を通した学習が必要と考える。当センターでは、個別SSTを用いてこれらの社会性の発達を促進することとした。
    調査対象および方法は、2007年7月~2010年3月までに当センターに受診、広汎性発達障害と診断され個別SSTを受けている43名とし、その保護者に日常生活や学校生活において適切にソーシャルスキルを使い円滑な生活を送れているかに関するアンケート調査を行った。
    当日は回答をもとに、個別SSTの効果を中心に、個別SSTをはじめる前後の保護者の気持ちへの気づき等、若干の考察を加え報告する。
  4. 発達障害の予防-アタッチメント対象の喪失を見直す-
    川崎医科大学名誉教授/Kids21 子育て研究所所長
    ○片岡直樹
    ヒトは生まれたとき白紙状態で、1年間を費やしてやっとひとり立ちします。ここに、定型人間(健常児)と発達障害児(自閉症児)が育っていく手掛かりがあります。ボウルビーの愛着理論(四段階)によって、各々の発達過程を比較します。自閉症児は、世間の通説によると、生まれてから愛着が育つ時期が混沌としていて選択的愛着が成立しません。生後まもなく親は「わが子がどこか変わっている」と気づきます。おとなしい。目を合わせない。笑ったり泣いたりしない。抱っこを嫌がる。しかし、私が出会う自閉症児は、全員健常児がたどる愛着発達の第一段階から第四段階までの途中で、頓挫してしまうため愛着形成に失敗します。この頓挫がなぜおこるのかが問題です。現代では、赤ん坊が“音”と“光”環境にはまるのです。すなわち、愛着は当初育っているけれども、途中BGM、テレビ、CD、電子おもちゃなどの環境の下で、愛着が消失するのです。現在、母性剥奪の問題も大きくなっています。昔は、テレビの代わりに、教え込み(早期教育)が赤ちゃんの発達を阻害していたと思われます。
  5. 心身症を合併し歩行障害を認めたターナー症候群の一例
    香川大学医学部小児科
    ○伊地知園子 小谷野薫 小西行彦 岩城拓磨 西庄佐恵 岩瀬孝志 西田智子 今井 正
    伊藤 進
    症例は20歳女性。生後11カ月でターナー症候群と診断され3歳時より成長ホルモンによる治療を行っていた。病名の告知は両親にのみ行われ、12歳11カ月時に初めて本人に告知され女性ホルモンの投与を開始した。18歳時腰痛を認めたが器質的な疾患は否定的であり心身症として心療内科を紹介、通院していた。20歳時過換気、意識消失発作などの症状を認め、小児科病棟入院となった。各種検査を行ったが異常所見は認めず心因性の症状として精神科受診を行いながら経過を観察した。歩行困難、腰痛などの不定愁訴を認めたが自分の病気を徐々に受け入れ、家族関係や過去のいじめについて整理できるようになり、症状は次第に落ち着いた。歩行障害に対するリハビリと同時に車いすを作成し家に手すりをつけたりするなどの環境調整を行って本人の不安の軽減に努めた。病名の告知の時期や患者が発症した症状に対する対応について考えさせられた症例であり報告する。
  6. 成長ホルモン投与で効果を認めなかった低身長の一例
    1)松山赤十字病院成育医療センター小児科
    2)成育医療カウンセラー
    ○片岡京子1) 小谷信行1) 大石早苗2) 玉井利江2) 山口和恵2) 青野育美2) 井上和子2)
    岩本早苗2) 平林茂代2)
    症例は5歳女児。成長ホルモン(GH)分泌不全を認め、GH治療を開始されたが、その後著しい成長不全を認め、また、生活環境への不安を認めた保育園の園長より当科へ紹介された。母子で生活しており経済的問題もあり、母子共に小児科入院として、児に対しては、GH治療を継続しながら、運動リハビリやカウンセラーによる保育ボランティアの時間を設け、自由に過ごせるような環境をつくり、母親に対しては、希望によりカウンセリングや心療内科受診を行うなど母子双方へのサポートを行った。大人びていた児に甘えや反抗がみられるようになり、それに伴い4カ月で6cmと著しい身長増加を認める一方、母親の方は、他者に対して感情のコントロールが難しい場面が増え精神的不安定さが顕在化した。母子双方へのサポートを行うことで、児の低身長に対する施設入所でのGH治療や、母親への精神科入院での治療に対して同意が得られ、各々への治療が可能であった。
  7. 肥満を主訴に来院し、発達障害に気付かれた3例
    福山医療センター小児科
    ○細木瑞穂 高杉瑞恵 坂本朋子 和田智顕 野島郁子 高橋伸方 荒木 徹 池田政憲
    【目的】肥満発症の原因は遺伝的要因だけでなく、生活習慣や心理・社会的ストレスも大きく関与している。今回我々は、高度肥満を主訴に来院し、経過中に発達や社会行動の未熟さに気付かれ、発達障害と診断された3症例を経験したので報告する。
    【症例】<症例1:9歳男児>肥満度+72%。血液検査で、肝機能障害、高尿酸血症、高脂血症あり。幼少期より言語発達遅滞、対人関係の未熟さを指摘されており、小学校中学年より不登校傾向があった。自閉性障害と診断。
    <症例2:11歳男児>肥満度+59%。血液検査で高脂血症あり。不定愁訴・同級生とのトラブルが多く、不登校傾向があった。アスペルガー障害と診断。
    <症例3:8歳女児>肥満度+77%。集団内では大人しく、自発的な行動が少なかった。精神遅滞と診断。
    【考察】高度肥満児を診察する時、遺伝・環境因子だけでなく、児の特性についても念頭に置きつつ治療を行うことが重要と考えた。
  8. 母親と一緒にプレイセラピーを行った選択性緘黙症の6歳女児例
    医療法人 石谷小児科医院
    ○山本知佳 石谷暢男
    選択性緘黙の子どもは、なじみのある環境では親やよく知っている人と自由に話すが、家の外で知らない人に対しては黙ったままでいる。また、緘黙児の中には固まってしまって自分で行動をすることができない緘動を示す子どももいる。子どもがうまく話すことができない最も一般的な理由は、不安であると言われている。話しかけられたり、返事を期待されたりすると、恐怖で立ちすくんでしまう緘黙の子どもたちも少なくない。
    場面緘黙を主訴に来院した6歳女児例について、若干の考察を行ったので報告をする。本症例は緘動も伴っており、母親の緊張も高く、母親の緊張が子どもの緘黙症状にも影響しているのではないかと推測された。カウンセリングルームが安心した空間であると女児が感じとれるためにまず心理士と母親との信頼関係を作ることが治療効果をあげるために大切だと考えられ、母親・子どもと3人でのプレイセラピーを行った。
  9. 大学生のうつ病認知スケール結果と心理支援教育体制の必要性
    徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
    ○二宮恒夫 橋本浩子 芝崎 恵 谷 洋江 岸田佐智
    うつ病認知スケール(町沢静夫作成)は、否定的自己認知、対人過敏(依存性)、強迫的思考の検査項目からなり、「非常にそう思う」(4点)から「まったくそう思わない」(1点)までの4段階評価を行い、これらの合計点数から、うつ、不安障害を推定する検査である。心身的な問題を抱える大学生が増加してきたことから、種々の学科や学部、大学の学生を含む737人についての調査結果、学科、学部、大学により差が見られた。否定的自己認知を示す人は、1.5〜19.6%(10.0%)、対人過敏は6.1〜35.3%(23.6%)、強迫的思考は4.3〜17.6%(11.0%)、うつ傾向のある人は2.9〜19.6%(8.5%)であった(カッコ内は平均値)。相談体制だけでなく、日頃からの教育の中に自己を知り、自己を肯定的にとらえる心理支援の導入が必要であり、高校、中学校、小学校へとフィードバックすることが大切である。
  10. 子どもと家族・こころの診療部の5年間の歩み
    香川大学医学部附属病院子どもと家族・こころの診療部
    ○神内幾代 鈴江 毅 安藤美智子 山下佐知 横井裕子 阿部ひろみ 佐野祐華 福田 琴
    石川 元
    香川大学医学部附属病院子どもと家族・こころの診療部は2004年10月1日に開設された。対象年齢初診時15歳までの子どもたちのこころの問題、特に発達障害を専門として、児童精神科医、小児科医、臨床心理士、教師などが、オープンな空間で診療に従事している。その5年間のまとめや特徴を、症例を含めて発表する。
  11. 心身症外来における小児科医と臨床心理士の連携~3年間222例の検討~
    1)徳島赤十字病院 臨床心理士
    2)徳島赤十字病院 小児科
    ○高芝朋子1) 藤河周作1) 近藤梨恵子2) 七條光市2) 梅本多嘉子2)
    杉本真弓2) 東田栄子2) 生越剛司2) 渡邉 力2) 中津忠則2) 吉田哲也2)
    当院小児科の心身症外来では、医師が保護者を、臨床心理士が子どもを担当し、別室での親子並行面接を標準的な治療形態としている。H19年4月1日からH22年3月31日に当院小児科の心身症外来を受診した小児222例(未就学児7例、小学生103例、中学生93例、高校生以上19例)を対象とし、診断、転帰をまとめて検討した。診断は、身体表現性障害と適応障害で66%を占めていた。転帰は、全体の約半数が、治療回数10回未満で症状が消失し、経過良好のため終結した。治療3年目と長期化している症例は全体の6%で、広汎性発達障害が最も多く、被虐待やPTSDなど重篤な症例も認められた。長期的支援により、現在は77%が再適応しているが、精神科への入院や転校など、より踏み込んだ対応が必要となる症例が見られた。心身症外来では、子どもの発達に応じた対応や介入を行うと共に、家族への支援や、学校との連携が重要である。
  12. 当科で経験した同胞受診40例の検討
    1)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学
    2)岡山大学教育学研究科
    3)国立福山医療センター
    ○岡田あゆみ1) 大重惠子1) 藤井智香子1) 片山美香1) 2) 細木瑞穂1)3)
    森島恒雄1)
    心身症や不登校の発生には,素因と環境要因の双方が影響しており,同胞発症を認める場合も多い。今回我々は、保護者から発せられた「不登校の子の兄弟は、不登校になるのですか?」という質問に答えるため,当科受診症例の検討を行った。
    治療中に同胞の相談を受けることは多いが,受診に至った症例は40症例であった。受診の経緯として,1)診断目的で同胞が同時に受診,2)同胞治療中に他の同胞が影響を受けて発症し受診,3)同胞が全く異なった主訴で受診の3パターンがあった。とくに2)では,児の素因(背景に発達障害が存在)や家族の機能不全(養育支援が少ない,経済的困窮など)が重なることが多かった。
    家族の中に患者が発生するということは,家族システムに対する一つの危機である。とくに複数の問題が同時に発生する場合,保護者の負担は大きい。家族全体をサポートするためにどのような注意が必要か,後方視的に検討し報告した。
  13. 子ども支援における児童家庭支援センターの役割~なかべこども家庭支援センター紙風船の場合~
    1)なかべこども家庭支援センター紙風船
    2)かねはら小児科
    ○冨賀見紀子1) 2) 小田崇明1) 秋枝研二1) 金原洋治2)
    児童家庭支援センターとは、児童福祉法第44条の2項の規定に基づき、県の児童相談所や市の家庭児童相談室などの関係機関と連携しつつ、地域に密着したよりきめ細かな相談支援を行う児童福祉施設です。平成10年に制度化された国の事業で、平成22年2月時点で、全国に77ヶ所、中国四国地方には11ヶ所のセンターが設置されており、毎年新たなセンターが設立されています。児童相談所からの委託による指導や、子どもや養育者など地域家庭からの相談に24時間365日、休日・夜間や他の相談機関の休業日にも応じることができます。
    本発表では、児童家庭支援センターについて皆様により御周知いただくことを目的とし、発表者が非常勤心理士として勤務する“なかべこども家庭支援センター紙風船”における支援活動をご紹介したいと思います。
  14. インターネット上の母子手帳「web親子健康手帳すくすく」を用いた育児支援について
    1)香川大学医学部小児科
    2)同附属病院総合周産期母子医療センター新生児集中治療室
    ○大久保賢介1) 國方 淳1) 松岡剛司1) 小谷野耕佑2) 安田真之2) 日下 隆2)
    磯部健一1) 伊藤 進1)
    当院では平成19年よりインターネット上の母子手帳「WEB親子健康手帳すくすく」を作成し、育児支援に活用している。この親子手帳は現在の母子手帳機能に加えて離乳食の作り方、発達時期に併せたアドバイス、県内の医療情報や日々の育児で感じたことを記載できる成長日記欄、医療関係者が両親に対してメッセージを記載できる欄等も掲載している。主に早産児、低出生体重児ならびに抗うつ薬内服中の母親や育児不安の強い母親を積極的な対象として、WEBの双方向性を利用したサポートならびに育児情報の提供を行ってきた。新生児集中治療室入院児に対して頻回の面会ができない父親や祖父母がID、パスワードさえ共有すれば会社や自宅で簡単に児の様子を知ることができるため、育児協力者と母児との距離を縮める利点があった。また母親が自分の想いを綴りそれを家族や医療関係者と共有することで、育児不安や孤独感が和らぐ効果もみられたので報告する。
  15. Dyslexiaへの医療―教育―家庭のチームアプローチ
    1)高知大学医学部小児思春期医学
    2)細木病院小児科
    ○脇口明子1) 2) 島崎真弓1) 2) 福井真澄2) 新井淳一1) 2) 脇口宏1)
    演者らの、マス目を4色に分割する「カラーマス」は、色や形の認知に関わる視覚認知の腹側経路を利用できるので、「どこに配置するか」がわかりやすく、Dyslexiaの「読み」「書き」に改善がみられている。アスペルガー障害に合併したDyslexia22例について、「カラーマス」による治療を行い、全例で効果があった。全例で、医療―教育―家庭のチームアプローチによる特別支援教育が構築できた。医師、言語聴覚士の支援会議参加や、「学校の研修会」での医師による「発達障害」についての講演は、教師の理解を深めることでより高い効果が得られた。使用方法は言語聴覚士、教師、母親により様々で、その効果の程度には差がみられた。チームアプローチのあり方について検討した。
  16. 妊娠中混乱状態で出産した母と赤ちゃんへの介入
    1)高知県立中央児童相談所  
    2)高知聖園ベビーホーム
    ○澤田敬1) 三本知世2) 澤 峯子2)
    混乱妊婦から生まれ、生直後から非常に育てにくい赤ちゃん4名は虐待を受け、内3名は幼児期・学童期ADHD様症状を出した。
    混乱妊婦から出生し、生後1か月迄にベビーホームに入院した成熟児33名中、20名(61%)がdifficult childだった。主な症状は激しく泣く、過敏、哺乳障害、辛そうな顔つき、反り返り、睡眠障害、不機嫌、目が合わない等だった。
    この子達に対して子宮内まで戻しての育て直し療法、抱っこ・おんぶ・添い寝・一緒入浴・一緒遊びを主としたあまえ療法を行った。一歳時、症状は消失又は軽減した。赤ちゃんを拒否していた4名の母に対し、保育士のholding、内省的自己の養成、可愛く育った赤ちゃんとの触れ合いで赤ちゃんを受容できだした。
    大混乱妊婦4名に対し、妊娠中から助産師、保健師が介入し、問題なく出産、上手な育児が出来ている。強いストレスに曝されている妊産婦に対して、妊娠中から出産後まで継続した温かい支援、赤ちゃんへのあまえ子育てが大切である。
  17. 命を助け、心を守る小児医療環境
    香川大学小児科
    伊藤 進
    命を助けることの評価は、世界の国々のこどもの医療を比較できる乳児死亡率でできます。それは、乳児死亡率の半分以上を占める新生児死亡率を如何に改善するかにかかっています。日本は、新生児医療の向上に努力し輝かしい成果を得ています。香川県も2つの総合周産期母子医療センターと1つの周産期センターを中心に成果をあげています。しかし、その新生児医療における医療環境に目を向けますと、良好な母子相互作用を確立するための母乳育児の推進や可能な限りの母子分離の回避のできる医療環境が整っているとはいえません。新生児集中治療室に入院することにより、母子分離は生じますし、ましてや健康な新生児のための新生児室は無用の長物です。母子分離を出来る限りなくす努力は、特に周産期に携わる医療関係者には最も必要なことです。そして、その要となる母乳育児を推進させることが重要なのは言うまでもありません。私は、これらを成し遂げてこそこどもの健全な心の発達があるものだと考えています。こころの医療を考える場合に重要なことは、こころに起因するこどもの障害を如何に予防するかと、こころの問題で発症したこどもの疾患を如何に治療するかということです。前者によって後者のこどもがどの程度防げるかは分かりませんが、私自身は周産期の医療環境を改善することによりこころに起因するこどもの障害を少しでも防げたらとの思いで日々医療を行っています。また、こころの医療に関する分野はエビデンスを得難い分野ですが、EBMの手法に則って行いたいと思っています。
  18. 発達障害の病態・神経生理と5歳児健診
    小児科内科三好医院・院長
    徳島大学医学部・臨床教授
    宮崎雅仁
    普通学級に通っている子どもの5-10%程度が発達障害の範疇に属しており、一般開業医がプライマリ・ケア医として診療する機会は決して稀ではない。また、その障害特性より学校・社会生活を営む上で多様な問題を生じ易く、早期発見・早期介入が課題となっている。一方、その病態生理として不明な点も多々あるが中枢神経における神経伝達の異常が数多くの研究で見出され、それぞれの障害は多少の差異はあるが前頭前野の機能不全を伴う事が報告されている。本ランチョン・セミナーでは小児科開業医/大学病院発達外来担当医としての演者自身の経験や研究結果に基づき、①脳波や誘発電位が示す発達障害の神経生理学的見解、②中枢神経系の機能完成から考察した5歳児健診による発達障害の早期発見の理論的背景とその実際、③見出された病態生理(セロトニン等の神経伝達物質の異常や大脳半球機能分化異常)に基づく家庭での生活リズム・生活環境の改善や模倣・協調運動療法、を中心に述べる。
  19. 地域の子どもたちの発達支援のための5歳児健診
    国際医療福祉大学
    国際医療福祉リハビリテーションセンターなす療育園小児神経科
    下泉秀夫
    5歳児健診は鳥取県で始まり、我々も平成16年度から栃木県大田原市で市保健師、心理士、小児科医師の健診チームが各保育園・幼稚園を訪問する5歳児健診を実施している。5歳児健診実施後、年々5歳児健診までに問題点を指摘される児の割合が増加し、早期発見・支援が早くなっているが、平成21年度も28%の児童は5歳児健診で初めて指摘されていた。5歳児健診をきっかけに、医療、保健、福祉、教育の連携を進めるために、平成19・20年度に文部科学省の発達障害早期総合支援モデル事業を受け、以下の事業を行った。①医療、保健・福祉、教育分野のネットワーク化(早期総合支援モデル地域協議会、幼・保・小連絡協議会)、②保護者や各園へのサポート体制の充実(5歳児健診・事後指導、事例検討会)、③就学への円滑な移行方法の工夫(「ぼく・わたしの成長シート」、「のびのびノート」)、④研修会による人材育成、⑤講話会、パンフレットによる保護者の啓発。しかし、事業を進める中で、就学指導の在り方など連携にかかる問題点も明らかとなった。
  20. NICUにおける母子関係-内包される危機と関係構築の支援間隔のため
    関西医科大学小児科学講座
    石崎優子
    新生児医学の進歩により、在胎22-24週、数百グラムで出生した児が重い後遺症なく新生児集中治療室(NICU)を退院することも稀ではなくなった。極小・超低出生体重児は、医学的ケアのためにNICUに長期入院することが多く、人生早期を母親と子どもとが分離して過ごすことが多い。また母親自身が「健常な子を産めなかった」という劣等感や「子どもを苦しめた」という自責の念を持つことも多く、精神的な危機に陥りやすい。
    しかしながらNICUでは母子関係が育たないのではない。NICUという特殊な環境と母親の心理を理解し、スタッフが支えることによって、生物学的にも心理社会的にも不利な条件下の母と子の出会いではあっても母子関係は育まれていく。そのためにはNICUを治療の場だけではなく、母と子が共有する時間・空間として位置づけ、母子の関係性を支える場であることを認識することが最も重要である。本講演では関西医大附属病院NICUでの経験から、NICUにおける母と子の支援のあり方を考えたい。

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