(3)気管支喘息
森田小児科医院
「子どもの気管支喘息(ぜんそく)について」
1.子どもの気管支喘息(喘息と略)とは
小児期の気管支喘息は咳、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、呼吸困難を繰り返し、多呼吸、陥没呼吸、チアノーゼなどを伴うことがあります。喘息発作は気道感染やアレルゲン、気象の変化、急激な運動などで引き起こされますが、心理社会的因子(心因)も誘因や増悪因子となります。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹などのアレルギー疾患を合併することが多いことも小児期の特徴です。
他の心身症が合併すると、症状が複雑になって診断が難しくなります。心因による喘息は頭痛、めまい、頻尿、夜尿、チックなどの身体症状のほか、学業不振や不登校を合併することがあります。喘息は慢性に経過しますが、突然の呼吸困難から致死的な発作に至ることもあります。発症や経過に心因が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められることから、「心身症」に当てはまります。
2.喘息の頻度
喘息は乳幼児で約5%、小児で約6%に見られ、思春期までは男児に多く、その後に同率となります。小児喘息における心身症の頻度は、担当医による判断では約40%を占めています。
3.喘息の診断
喘息は前述の症状とアレルギー疾患の合併、既往歴、家族歴などにより診断されます。心身症は質問紙を用いて、担当医による心身相関から、保護者による喘息発作と心因、喘息児の性格、家庭・社会環境、その他の心身症、人生の転機に関する結果を合わせて診断されます。呼吸困難を伴う過換気症候群が喘息と合併または続発すると、診断と治療がむずかしくなります。
4.喘息の経過
喘息は2歳までに約60%が発症し、思春期までに軽症化して寛解に至ることが多いと報告されています。近年、発症年齢が年少に、寛解年齢が思春期以降に移動しているという報告もあります。心身症を合併する喘息は心因が関与するためか、非心身症群に比べて年齢が高いようです。
5.喘息の治療・生活指導
吸入ステロイド薬、抗ロイコトリエン薬などの長期管理薬を継続し、発作時には気管支拡張剤などを追加します。環境改善(室内外汚染物質やアレルゲンの除去など)、身体的鍛錬(スポーツなど)などの生活指導を加え、悪化要因に対応します。質問紙による心因の関与を検討して、喘息発作と心因に関する問題には、講習会、集団療法による生活指導や正しいセルフケアを理解させて実践させます。喘息の治療には集団療法としての喘息キャンプや施設入院療法、個別療法には箱庭療法などがあります。家庭・社会環境では、育児に関する指導や支援、家族間の葛藤には気づきを促し、学校での環境を改善して、対応法を指導します。