(10)心気症

氏家 武
氏家記念こどもクリニック

1.概要

心気症とは、医学的な診察や検査では明らかな器質的身体疾患がないにもかかわらず、ちょっとした身体的不調に対して自分が重篤な病気にかかる(かかっている)のではないかと恐れたり、既に重篤な病気にかかってしまっているという強い思い込み(専門用語で観念と言います)にとらわれる精神疾患の一つです。そして、そのとらわれは、いくら医学的な診察で異常がないと保証されても長く持続します。そのため、本人には強い不安や恐怖心などの著しい苦痛をもたらし、学校や仕事、家族関係などの日常生活にさまざまな支障をきたすことになります。

2.医学的情報

成人期早期に発症することが多く、子どもには稀な病気です。自分自身や家族、親しい人が重篤な病気になった、あるいは亡くなったというような強い心理社会的ストレスが心気症の発症のきっかけになることがあります。

3.症状

心気症の主な症状は、癌や心臓病など重篤な病気ではないかと過剰に不安を抱いたり、そうなることに恐怖心を抱くことです。心気症はまた、不安障害やうつ病を合併することが非常に多いです。

4.経過

通常、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返し、慢性に経過することが多いです。しかし、突然発症する場合、実際に身体疾患が合併している場合などでは改善しやすいと考えられます。

5.対応

通常、診察や検査で異常のないことを保証しても効果はなく、より深層にある不安を和らげるような精神療法に加え、薬物療法(精神安定剤や抗うつ剤など)が必要です。

6.専門機関への紹介

内科や小児科での対応では不安が解消しないことが多いため、心気症の心配がある場合はより早期に専門機関を受診するのが望ましいでしょう。

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