排泄の問題

1:概要・定義

 子どもは成長に伴い、徐々に排尿・排便のコントロールができるようになります。
 こうした排泄の自立の時期を過ぎても尿漏れがみられる状態が遺尿症で、このうち5歳以後で夜間睡眠中に尿漏れがある状態を夜尿症(おねしょ)、5~6歳を過ぎても日中に尿漏れがある状態を昼間尿失禁症(昼間遺尿症)といいます。4歳以後も下着内などに便漏れがみられる状態を遺糞症といいます。
 一方、尿漏れはないものの、5歳以上で18回以上排尿する状態を頻尿といいます。

2:原因

 夜尿症には、①夜間尿量が多い(尿を濃くして量を減らす働きを持つ抗利尿ホルモンの夜間分泌が不十分である)、②膀胱容量が少ない、③尿意があっても覚醒できない(子どもは生理的に眠りが深い)、の3つの原因があります。抗利尿ホルモンの夜間分泌や膀胱容量が十分になる時期は個人差があります。
 昼間尿失禁症には、膀胱機能障害や不適切なトイレットトレーニングの影響などの原因があります。トイレに行くタイミングを逃している子どもも多く、尿意を感じてもトイレが不快(怖い、暗い、など)で行くことを避ける場合や、何かに集中しすぎてトイレに間に合わない場合もあります。
 遺糞症の原因として、一番多いのは便秘です。腸管内に便が充満し、硬便の隙間から軟便が漏れ出てきます。心理社会的なものが原因となることもあります。
 遺尿症・遺糞症の原因として、腎臓、膀胱、尿道、脊髄、内分泌、神経などの病気が隠れていることがあるので、各種検査が必要となることもあります。
 頻尿の原因としては、感染症や内分泌など病気、薬物の副作用などもありますが、子どもでは明らかな病気を認めないものが多く、これを心因性頻尿といいます。心因性と名付けられていますが、明らかな心理社会的ストレスがあるものは約半数です。一時的に膀胱が過敏になり、尿意を感じやすくなっている状態とされています。

3:治療・対策

 身体的疾患があれば、まずその治療を行います。身体的疾患がなければ、以下の対応となります。
 夜尿症の治療としては、まず生活指導を行います。就寝2~3時間前からの飲水制限、夜寝る前に必ずトイレに行くことを心がけます。毎日の排便の習慣や、早寝早起きといった生活リズムを整えることも重要です。家族が夜中に子どもを起こしてトイレに行かせていることもありますが、夜間の睡眠が妨げられることが夜尿の悪化につながることもあるので、勧められません(短期の宿泊行事など特殊な場合では、夜間睡眠中に起こしてトイレに連れて行くことはよいとされています)。生活改善だけでうまくいかない場合に、子どもや家族と相談しながら、薬物療法や夜尿アラーム療法の導入を検討します。夜尿アラーム療法とは、パンツにセンサーを装着し、夜尿でパンツが濡れ始めるとアラームが鳴り、子どもを起こして残尿を排尿させる治療法で、膀胱容量を増加させる効果があります。
 昼間尿失禁症の治療としては、排尿訓練を行います。排尿の時間を決め、定時になったら本人に尿意がなくてもトイレに行くよう指導します。また、休日には排尿を我慢する練習を行います。排尿訓練だけでうまくいかない場合には、薬物療法を検討します。
 遺糞症の治療としては、便秘の治療を行います。まず直腸内に貯留している便を取り除き、便貯留が再発しないように食事療法や薬物療法を開始し、適切な排便習慣が身につくように指導を行います。
 遺尿症・遺糞症どちらの場合も、子どもを怒ることは改善に繋がりません。遺糞や遺尿の症状そのものが恥ずかしさや罪悪感を引き起こしやすく、子どもの年齢が上がるほど自己評価が低下しがちです。すでに自信を無くしかけている子どもにとって、怒られることはさらなる心理的負荷となり、症状の悪化を引き起こすこともあります。本来、子どもは褒められることで自信がつき、できることが増えたり、目標に向けて頑張れるようになります。遺尿症・遺糞症に関しても同様で、成功した時だけでなく、子どもの行動が良い変化をした時、取り組む意欲が見られた時など、機会を逃すことなく周囲の大人はしっかりと褒め、子どもの自己評価を伸ばすことが、症状改善の助けとなります。
 心因性頻尿の治療としては、尿意に対する不安や家族からの注目が二次的な悪化要因になりやすいので、まずは「好きなだけトイレにいっていい」と子どもに保証します。家族はトイレに行く子どもを非難も心配もせず、見守ることが大切です。長期化する場合は、薬物療法や心理療法を検討します。

 

(細木小児科 細木 瑞穂)

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