睡眠時随伴症
1. 概要・定義
睡眠時随伴症群は睡眠障害国際分類 第3版(ICSD-3 2013年)の中に位置づけられます。さらに、症状出現時の睡眠段階により、ノンレム睡眠随伴症とレム睡眠随伴症に分けられます(表1)。臨床上問題になることが多いのはノンレム睡眠随伴症の中の睡眠時驚愕症(診断名ではありませんが夜驚症と呼ばれることもあります。)や睡眠時遊行症(同じく夢遊病と呼ばれることもあります。)です。ここでは主にノンレム睡眠随伴症の睡眠時驚愕症について記載します。睡眠時驚愕症は見ている家族にとってはとても心配なものです。これは脳の未熟性によるもので、年齢とともに自然によくなることが多いです。病気を知り、見通しを持って対応していきましょう。
2. 症状
小児では主に夜間睡眠の前半の時間帯(22時から1時頃にかけて)にノンレム睡眠が多く見られます。その時間帯に、恐怖に満ちた大きな叫び声とともに目が覚めてしまうのが睡眠時驚愕症の特徴です。その際に、頬が紅くなる、瞳孔が開く、脈が速くなる、激しく汗をかく、呼吸がハアハアすることもあります。恐怖のあまりに飛び起きて走り出すなど、本人がケガをしたり家族に危害が及ぶこともあります。 この状態の時には呼びかけても反応せず、本人も覚えていません。他の睡眠時随伴症と比べて持続時間が数分と短いことが特徴です。
3. 診断法
診断は状況のききとり、エピソードの観察からICSD-3による睡眠時驚愕症の診断基準(表2)を参考に行います。確実な診断や合併症がないかを調べるために、ビデオモニタリングを含む睡眠ポリグラフ検査(polysomnography: PSG)を行うこともあります。(行える施設は限られます。)
4. 治療・対策
症状があるときに声をかけるとかえって混乱したり危険な行動をとりやすくなります。周りの人は子どもがケガをしないように安全に留意した環境を作ります。行動の激しい例では部屋から出られないように窓やドアに鍵をかける、危険物を近くに置かないなどの配慮が必要なことがあります。エピソードの頻度が高い、行動が危険である、環境調整だけでは対応できない場合には、やむを得ず薬を投与することもあります。
5. 合併症・併存症
睡眠時随伴症は閉塞性睡眠時無呼吸症候群など他の睡眠障害を併発しやすいことが知られています。また恐怖や徘徊など奇妙な動きを繰り返す場合には、てんかんやむずむず足症候群、注意欠如・多動症(ADHD)などによる症状の場合もあります。
(川崎西部地域療育センター 柴田 光規)