不登校

1.概要・定義

文部科学省の定義では下記の通りです。

・何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因や背景により、児童生徒が登

校しない、あるいはしたくともできない状況にあること

・ただし、病気や経済的な理由によるものを除く

1年間に30日以上欠席

小児科診療においては、理由や欠席日数に関わらず、不登校として対応すべきと考えます。

2.症状

・不登校の原因は多岐にわたり、必ずしも医学的な原因があるとは限りません。

・小児(14歳以下)では、不定愁訴を訴えることが多いです。

3.診断法

定義に当てはまれば、診断になります。

身体疾患、精神疾患、神経発達症が原因になることがあり、鑑別が必要です。

また、子どもを取り巻く環境(家庭:家族における人間関係、家庭機能不全、虐待、ネグレクトなど、学校:学校における人間関係、いじめ、成績不振など)が原因で不登校になることもあります。このため、子どもを取り巻く環境についての情報収集が必要になります。

4.治療・対策

治療・対策の総論

・誰も不登校を「治す」ことはできません。

・不登校状態から抜け出し、再スタートを切るのは子ども自身だからです。

・周囲ができるのは、そんな子どもを温かく見守ることになります。不登校の対策は、
この「見守り方」が重要です。

・時間がかかるため、焦らずに長い目でみた支援を行います。

・登校できることを絶対の目標にせず、登校が無理なら別の道を探します。

最終目標は「子どもが社会的に自立すること」です。

小児科医が不登校に対して行う具体的な対応は下記になります。

・医学的要因の検索、対応、治療

・症状や困りごとへの対応を通じた医師患者(保護者も)関係の構築

・子どもと家族の心理面への対応と環境調整

・体調および生活リズムの管理を目的とした生活指導と環境調整

・状態に応じた社会参加の促し、その場所と機会の確保を目的とした環境調整

・適切なコンサルト:他職種や関連機関との連携

詳細は不登校診療ガイドラインを参照してください。

5.合併症・併存症

不登校の原因は多岐にわたり、加えて複数の原因が存在していることもあります。原因となる疾患、不登校の経過中に生じる疾患については対応が必要です。

・身体疾患:起立性調節障害、機能性消化管障害、機能性頭痛 、貧血、甲状腺疾患、など様々です。対応については各ガイドラインを参照してください。

・神経発達症:注意欠如多動症(ADHD)・自閉スペクトラム症(ASD)、知的発達症、限局性学習症(SLD)などがあります。特性に応じた支援と環境調整が必要になります。

・精神疾患:不安症、強迫性障害、うつ、統合失調症など

症状:不安、強迫行動、うつ状態、自傷行為、幻聴など

     精神症状は、長引く不登校の結果として生じることもあります。

  児童精神科へのコンサルトが必要になります。

・家庭要因:虐待、ネグレクト、家庭機能不全など

 疑いが強ければ児童相談所や地域行政機関への通告、相談が必要になります。

・学校要因:いじめ

 学校での迅速な対応が必要になり、学校との連携を行います。

不登校を診療するにあたって必要な疾患概念

心身症 :子どもの身体症状を示す病態のうち,その発症や経過に心理社会的因子が関与するすべてのものを示します(小児心身医学会の定義)。それには,発達・行動上の問題や精神症状を伴うこともあります。また、子どもの場合,身体症状にとどまらず,行動上の問題,すなわち「登校できない・登校しない(不登校)」状態を伴うこともしばしばあります。

不安に伴う身体症状:登校への不安に伴って,各種の痛みや気分不良などが出現します。

学校から離れると症状は軽減するが,登校しようと思うと再び体調不良が出現します。不登校の初期に多い病態です。また、登校していない、できていないことに対する不安から身体症状が出現することもあります。

(関西医大小児科・心身症・発達症グループ 柳本 嘉時)

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